暑い夏場の工場内や倉庫内を快適にすると言われるHVLSファン。ここでは、HVLSファンによって体感温度が下がる原理、およびHVLSファンの設置が消費電力の抑制につながった事例などをご紹介します。
HVLSファンで室内の空気が快適になる原理を見てみましょう。
HVLSファンから発生する空気は、天井から床に向けて大きな支柱を描くようにして流れます。この空気の支柱が床に達すると、空気は床から一定の厚みを維持したまま横へと移動。やがて空気は壁にぶつかり、今度は天井へ向けて移動します。天井にぶつかった空気は、再びHVLSファンに集められ、床に向けて新たな空気の支柱を作るというサイクルが回り続けます。
空気の動きをイメージすると分かると思いますが、室内にいる全ての人が、HVLSファンが作り出した空気の流れに常に触れていることになります。
液体が気化(蒸発)する際、表面の熱が奪われます。この奪われる熱のことを「気化熱」と言います。
例えば、プールから出た際に風が吹くと「寒い」と感じることがありますが、これは風によって体の表面が乾く際に気化熱が奪われるからです。あるいは、真夏の道路に水をまくと周囲が涼しく感じますが、これも水が蒸発する際に道路の気化熱が奪われるためです。
HVLSファンで涼しさを感じるのも、これと同じ原理。施設内で忙しく働くスタッフたちは、常に体の表面に薄っすらと汗をかいています。この汗をHVLSファンの風で蒸発させて気化熱を奪って体感温度を下げるのが、HVLSファンで涼しさを感じるメカニズムです。
一般的なHVLSファンは、天井から床に向かって空気の流れを作りますが、製品によっては空気を逆の流れ(床から天井)にできるものもあります。体感温度を下げたい夏場には前者の流れにし、逆に体感温度を上げたい冬場には後者の流れにすれば、1台のHVLSファンだけで一年中快適な室内空間が実現します。
スペインのバレンシア空港では、空調設備に関連する消費電力を抑制するため、天井に大型のHVLSファンを24基設置しました。
その結果、夏場は平均4~5度の冷却効果が生まれ、消費電力が最大30%抑制。冬場はエアコンで暖められた空気を循環させることで、消費電力が最大40%抑制されました。年間を通して、消費電力の大幅な削減を実現しました。
HVLSファンを設置後も、夏は冷房を、冬は暖房を稼働させていますが、HVLSファンによって空気の大きな循環が生まれたことで、夏も冬もエアコンの設定温度を緩和できたことが消費電力の削減に貢献しています。
ブレードが軽量であればあるほど、回転させる際の消費電力が少なくなります。また、3Dシミュレーション等を通じ、室内の形状に応じた最適な設置場所を選ぶことも消費電力の削減につながるでしょう。
もとより、一般的な小型の天井ファンよりも産業用HVLSファンのほうが消費電力も故障率も低いため、ランニングコストを考慮した商品選びも大切なポイントになります。
HVLSファンは、気化熱の原理を応用して体感温度を下げるシステム。空気そのものを冷却する冷房機とは根本的に異なる原理によって、快適な空間を作り上げます。
夏場の暑さによる熱中症予防対策が急務とされている昨今ですが、一方で様々な社会情勢の影響もあり、企業や個人は常に節電意識を持つよう促されています。消費電力を抑えながら夏場の快適な空間を作り上げるHVLSファンは、今後ますます注目されていくのではないでしょうか。
当サイトでは、ニーズ別に様々なメーカーの様々なHVLSファン製品をご紹介しています。導入を検討しているものの、まだ具体的に製品を絞り込んでいないという企業様は、ぜひ当サイトの情報を参考にしていただければ幸いです。